リンパ腫とは?


リンパ腫は血液の細胞であるリンパ球ががん化した疾患であり、猫において最も発生頻度の高い悪性腫瘍です。

発生部位や悪性度などからも様々なタイプに分類されますが、国内の猫では消化管から発生するリンパ腫が最も多いとされております。

VAPC療法


これまで猫の高悪性度消化器型リンパ腫(大細胞性リンパ腫)の治療に対しては、高悪性度リンパ腫において最も一般的なプロトコールであるビンクリスチン、シクロホスファミド、プレドニゾロン併用のCOP療法や、COP療法にドキソルビシンを追加したCHOP療法と呼ばれる抗がん剤治療が主に用いられてきました。COP療法やCHOP療法に対しては一時的に奏効することが多いものの、奏効期間は決して長くはなく長期生存することは稀でした。また、猫においてはビンクリスチンの消化器毒性が強く、消化器型リンパ腫の治療においては副作用のため治療の継続が困難となることも少なくありません。

 

2023年12月にAntony S Moore先生らが、ビンブラスチン、ドキソルビシン、プロカルバジン、シクロホスファミド、L−アスパラギナーゼ、プレドニゾロンの6剤による新たなプロトコール【VAPC療法】を発表しました。

Moore AS, Frimberger AE. Treatment of feline intermediate to high-grade alimentary lymphoma: A retrospective evaluation of 55 cats treated with the VAPC combination chemotherapy protocol (2017-2021). Vet Comp Oncol 2023.

 

無再発期間の中央値は180日であるものの、1年生存率35%、2年生存率26%、3年生存率26%であり約3割で長期に生存することが報告されました。

このプロトコールの特徴は以前のCHOP療法よりもシクロホスファミドの用量を高め、CHOP療法にて最も副作用が問題となるビンクリスチンを使用していないことです。(本研究の予備研究においてシクロホスファミドの猫の用量は、COPやCHOP療法で用いられている用量よりも増量可能であることが報告されていました。)

これまでCHOP療法では最も効果が低いのではないかと考えられていたシクロホスファミドを増量し主力とすることで、長期生存が難しかった猫の高悪性度消化器型リンパ腫において約3割の猫ちゃんが2ー3年という生存可能であるという驚きの研究結果でした。

VAPC療法がCHOPやCOP療法と比較して明らかに優れているかどうかについては不明ですが、新たな治療の選択肢となることは間違いありません。

 

モリタ動物病院ではリンパ腫に限らず腫瘍疾患の最新の治療を取り入れるとともに、ご家族の様々なニーズにお応えできるように国内外の各種抗がん剤を取り揃えております。